Dreamforce 2018レポート 〜年に1度のエンドユーザのためのお祭り〜

今年もDreamforceが始まりました。

Dreamforceは毎年9月〜12月の間のいずれかの期間、サンフランシスコで開催されています。サンフランシスコは曇りがちなこともあり、真夏でも肌寒いときは多いのですが、さらに9月ともなればかなり冷え込みます。幸い今回私が到着した月曜日はポカポカ陽気でしたが、日が沈む頃ともなればジャケットなしでは少々きついのは同じです。

個人的な話ですが、今回でDreamforceへの参加は5回目になります。最初が2008年ですので10年前ですから、ほぼ2年に1回参加している計算になります。

この10年で規模も大きく変わりました。サンフランシスコのSOMA地区にあるMoscone Centerというコンベンションセンターをベースとするのは変わらないのですが、会場の確保のために近隣のホテルのコンファレンスルームを貸し切ったり、公道を閉鎖してイベントスペースにしたりと、近年はさながら街全体がDreamforceに染まっているようになっています。

特に、今年はSalesforce Towerが竣工し、サンフランシスコの新しいランドマークとなっていますので、その地域に与えている影響度も含め、勢いはとどまることを知りません。

さて今回、大きくアナウンスされているのは、昨年もアナウンスされていた「Einstein」のさらなる発展形であり、音声認識を核にしたサービスである「Einstein Voice」と、Marketing CloudやCommerse Cloudなどの各クラウドを顧客起点としたビューに統合するという「Customer360」ということになるのでしょうか。前者のVoiceについては、Amazon AlexaやGoogleアシスタントなどの音声エージェントの流れをエンタープライズのユースケースに応用したものともいえるでしょうし、意外性こそはないものの大変着実な打ち出しでないかと思います。後者については、ついこの前買収されたMuleSoftのクラウドインテグレーション技術が大きな貢献をしていることは想像に固くありません。

しかし、これについては毎回思うのですが、Dreamforceで発表されたニュースはほぼ同時に日本のメディアにも流れます。なので、上記のようなプレスリリースなどでも得られる情報であれば、別にDreamforceに行かなくても誰でもわかるのです。正直、私がそれをなぞって伝えたところで、あまり価値のあるものにはならないでしょう。

ただ、それでもDreamforceに行く価値があるというなら、それはいったい何なのか。人によって意見は様々かと思いますが、ある人はビビッドなプロダクトのデモを見られることが重要だと考えるでしょうし、またある人は普段日本ではあまり見ないような3rdパーティのソリューションに触れられるのがよいと答えるでしょう。いろいろありますが、Dreamforceが実質「お祭り」であることは、Salesforceの演出を見ればわかります。

面白いのは、Salesforceがここ2,3年で、今までのトラディショナルなビジネスソフトウェアベンダーとしてのブランディングから、キャラクター(”Astro”とその仲間たち)を全面に出したブランディングに切り替えてきていることです。『はて、ビジネスアプリケーションクラウドにCartoon Charactorって必要?』と通常の大人であれば訝しむかもしれませんが、実際に体験してみると、この年に1度のDreamforceを「お祭り」として認識させ、参加者の気持ちを盛り上げるのにうまくハマっているような気がします。

なので、ここはひとつお膳立てに乗っかって、お祭りとしての価値を最大に享受して楽しむのが、粋な大人というものです。お祭りですから音楽もいたるところに流れていますし、コンサート(Dreamfest)だってあります。80年代のロック好きにはこういった演出は堪らないものでしょう。

お祭り要素以外にも、他のIT系のイベントと比べてDreamforceが完全に異なっているのは、エンドユーザが見ることができる近未来のビジョンを提示することにフォーカスしている点だと思います。これについてはIT系のプロフェッショナルを中心に物足りないと思う人もいるのは確かでしょう。しかし、演出や表現方法なども含め、未来へと進んでいく価値を「伝える」ことにこれほど注力しているイベントというのは、なかなかありません。そういった側面を見ていけば、違った感想を得られるでしょう。

Salesforceに関わる人であれば、いやSalesforceに関係ない人でも、いつかは行ってみるといいのではと言える、そんなイベントです。参加できる機会があればぜひ手を上げてみてください。

この記事を書いた人
冨田 慎一
株式会社マッシュマトリックス代表取締役社長

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